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自家採種を進める…岩崎政利さん

 岩崎さんのお話その2。自家採種を進めてきたこれまでを振り返った。

■広がる自家採種の世界

[最初は不安な自家採種]私たち農民が使っている種というのは、今までほとんどが種苗会社から買って種を蒔くという、それが現状の農家の姿であったとおもいます。いろんな種苗会社のカタログを見て、毎年毎年出る、交配種、すぐれた種を使っていたわけですが、有機農業をすることによって、自分にしかない野菜を作りたい、もっとおいしいものを作りたい、ということで自家採種に踏み切ったわけです。

 始めた当初、本当にできるのかという不安がありました。しかし、幸いなことに私は地元特産の五寸人参の採種を種苗会社に委託されて、3年ほど種採りをやった経験がありまして、その人参から始めたわけです。

 しかしその人参でさえ、不安ですからやっぱり販売用には市販の種を買って蒔く。そこで最初は1列蒔いてみる、姿を見てチェックして、そして、「あ、自分の種でもそんなに変わらずにできる」ことがわかってきて、1年目は1列だったのが2年目は5列、3年目は1畝になり、5年目は自分の種すべてで五寸人参の生産に入ったわけです。

[種が取れなくなってきた]その後、もっとおいしいものを、もっとすばらしいものを、ということで種苗会社の母本選抜以上に厳しく選抜をして、ずっとそれを繰り返してきました。優秀な種をまさに選び抜いてゆくこの方法には非常に自信をもっていたのですが、5年、7年、8年と経つ中で、今度は種が採れなくなってきた。そして生命力も弱ってきたのです。

 人参の母本を選抜するときに、一番人参をひきぬいた瞬間にわかんるんですが、だいたい美しい人参というのは女性、ということで女性人参、少し節が太くて元気があるほうが男性人参、ということで分けてますけれども、私は(優秀な)女性人参だけを選んで種取りしてましたので、種が取れなくなってきたのではないか。そういうことに気づいて、3~4年前から(粗雑な?)男性人参も加えるようにしましたら、またもとの種のように還ってきまして、生命力もついてきまして、あーこれでよかったんだなということで。

[種の多様性を残すこと]そんなことから、見栄えの良いものだけを純粋に選抜したいというような人間の欲望で、そういうふうにしてはいけない、もっと私たちは野菜の立場になって、種の立場になって、種採りをすべきなんだということがあって、そういうことに気づかなければ自家採種は続けられないんだな、という感じもしています。農民として大切に種を守っていく中で、それこそ本来の多様性、やはりあまり純粋的に育てない、多様性をもたせる、ということが(あまり純粋になると種が取れなくなったり生命力が弱くなったりしますから)、種はある程度多様性が非常に大切だな、という感じがします。

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[野菜の個性が見えてくる]こういうふうに自家採種を毎年繰り返してきますと、私たち野菜農家にとって、まったく見えなかった世界が見えてきたのも事実です。

 全部同じに見えていた野菜も、実際自分が選抜をして、ひとつひとつの株の姿、個性特性あるいは姿を見ていきますと、その顔が見えてくる。ひとつひとつの個体がよく見えてくることがわかってきました。

 私は今まで野菜作りの中で何をやってきたんだろうか。野菜の個体の姿を見抜く力がなければ、その野菜を最高に生かせない。こうした種のもつ個性、それがわかったときに私は初めて、その農家は作物を最大に生かすことができるということに気づいたときに、私は、ああ、種採りをしていてよかったな、という感じがしました。

[豊かな種取りの世界]そういうふうにですね、その野菜の一生とつきあうことで、いろんな野菜の自家採種を始めていったんですけれども、たくさんの野菜が自家採種できるようになってきました。まだ、自信をもって流通の方、消費者に届けられない野菜も、まだ選抜中の野菜もありますが、人参から始めた野菜が、ひとつひとつオリジナルが増えまして、たくさんの自家採種の野菜になってきたわけであります。

 この野菜の中には、本当にもう、非常に、まさに消えようとしている野菜もありますし、たとえば、京都の篤農家が先祖伝来作ってきた野菜もあります。ひとつひとつ思いと、その作物に対する思いがありまして、このごろ依頼される種が非常に珍しい種で、貴重な種が多くて、あ、これもいいわ、これもいい、ということで、ますます増えつづけているわけですけれども。どこまで増やしていけばいいのか迷ったりもしています(笑)。

■多様性を次世代につなぐ

 15年前から有機農業研究会の種苗部会に関わり、自家採種に取り組んできた岩崎さん。「私もまあいやな仕事を引き受けたもんだなぁ」と当時を冗談半分に語るが、話されている以上に、種の世界は技術的にも地道で時間のかかることと思われる。

 また、農業の世界が畑の何万株という「群」を管理して最大限の恵みを得る、ある意味「量」の営みであるのに対して、話にもあったように種採りが「個」を管理する、個体の力を見抜く智恵、「質」の営みであることも種に取り組むことの難しさを現しているといえるのではないだろうか?

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