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2008年に発行された幻の冊子。テーマは「南のムラ」そして「水を巡る旅」。
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Author:ponchu
日本の歩き方……おいしい村はどこにある? by タケウチアマネ

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水のデザイン……向山茂徳さん

ぼくのシゴト先の生産者向け情報紙『Radix News Letter』の12月末発行号(52号)に、向山茂徳さんという方を紹介した。すばらしい方なのでここでも紹介したい。以下……

自然に還る畜産

農場主の向山茂徳さんは1984年、塩山市から茅ケ岳山腹1000mの地に現在の黒富士農場を開設、1991年平飼い養鶏を開始した。農場中央を流れる沢の左右の斜面上、森にうもれ佇む鶏小屋。沢水は変わらずおいしい。この土地で向山さんが進めている新たな取り組みを紹介する。

●水をデザインする

畜産は生産の工程より静脈側のシステムを見る。すなわちその構造を見るのに、土と水がどう循環しているかを見るのがよい。この意味で向山さんの設計思想は、すべて農場を流れる“おいしい”沢の水にあると言える。

森の営みが生命活動に起因する汚染物質をどのように浄化するか。

向山さんはそのふるまいを科学的にシステムに取り込むBMW技術にめぐり合い、土着の微生物と、自然が本来備えるミネラルの機能を活用し、嫌気発酵主体のバイオリアクターを介して畜ふんを活性堆肥に、汚水を活性水に転換し循環させる技術を農場の設計の柱に据えた。

f:id:buonpaese:20071029134254j:image:left日本の畜産において飼料は輸入が前提だ。そして静脈である排泄の問題は別扱いで、コスト追及の面から長く目隠しされてきた結果が様々な環境汚染だ。向山さんは開設当初から、鶏糞発酵堆肥を域内で供給する仲間づくりを進め、15年前には山梨県内の果樹農家とのネットワークを結び、“土”での農畜連携を遂げている。その仲間が“やまなし自然塾”であり、技術的な背景をなす山梨自然学研究所(※1)へと進化していったし、開設から10年に及ぶ大仕事が、森に埋もれた農場の沢水を生かし続けてもきた。

水のデザイン。これらが後世に残るだろう黒富士の事業の骨格だ。ローインパクトを旨としながら、事業として高い生産性を保つ黒富士の生産システムは、堆肥や水で域内ネットワークを結ぶことで一旦の完成を見た。

●地域に還る畜産

次に向山さんが目指すのは、飼料のネットワークと、その有効活用のための技術の完成だ。以前の日本農業が小農有畜複合であり、田畑と、家畜小屋には数十羽の鶏、数頭の豚や牛が暮らす姿。餌はワラや残飯などの副産物が養うことで循環していた。原油高、穀物相場の急激な不安定化で注目されている飼料自給だが、向山さんはこの取り組みに既に5年の時を費やしてきた。

向山さんの目指す飼料の域内自給は、まったく新しい技術になってくる。それはまず高品質の生産物を安定して生産しつつ、分業化した食品産業全体をネットワークする。そして最終的には生産物に高い機能性を見出していく。

f:id:buonpaese:20071029154534j:image:left基本形はもう見えているという。現在向山さんが入手している菜種油粕、味噌、オキアミ粕、米ぬか、おからなどの飼料原料のすべては域内の食品メーカーから産出され、履歴が管理されているが食品残渣と呼ばれる、いわば廃棄物。これらを鶏の健康衛生面、求められる代謝スピードから、乳酸菌(腸内pHを安定化させる)と納豆菌(サルモネラ、コクシジウム対策)などにより積極的に発酵させ、最終的にはアミノ酸バランスを調整した上で飼料とする。

ボイラーつきの混合装置を発酵槽として、発酵時のみ加温。嫌気と好気の異なる条件をコントロールしつつ、4つの槽を経て完成させる。ここで発生する暖かい空気は、隣室で別途進めているクロレラの培養室に送られ、これもBMW技術による活性水で培養、飼料にタンパク源、色素源として添加される。

この一連のシステムが現在、沢を隔てた鶏舎の反対側に設置されていて、原料供給、細かい耐用が確認できた後は、しっかりと農場全体の系に組み込まれ、少しずつ現在の輸入飼料に取って代わる予定だ。畜産が、新しい地域との結びつきを、必然として生み出すのかもしれない。

物質循環の大きな流れは土でも飼料でも、域内のネットワークで、人が生み出す。目に見えない部分では、森の常在菌の緩やかな浄化力を土と水に(広範に)対応させる。飼料の発酵には積極的に菌種を選定し(限定し)対応させる。生命体は物質循環において唯一、秩序を生む流れだというが、ここでは人と微生物の秩序形成の総合力が、水を汚さない、クリアでクリーンなデザインに結ばれていると言える。

こうした一連の取り組みは、かつてアメリカ西海岸で志向された適正技術の流れや“豊かさを2倍に、資源消費を半分に”を標榜した『ファクター4』(E・ロビンスほか著・省エネルギーセンター刊)をほうふつとさせた。一貫しているのは高度な技術による自然との共存。そしてその景観は“草の屋根”の建築などで知られるドイツの建築家、フンデルトワッサーの環境デザインだ。

f:id:buonpaese:20071221031748j:image:leftフンデルトワッサーはオーストリアの芸術家で、建物と樹木の曲線をモチーフにしていたが、後期はその世界を建築として展開していった。建築と植物を一体化させるレイアウト、特にルーフプラント(屋根が植物と同化していく)発想が美しい。写真はウイーンにあるフンデルトワッサーハウス。まるでトトロの森のように住居が樹木に覆われていく。

f:id:buonpaese:20071029133150j:image:left左が山の斜面の黒富士農場の真中。ここに住居があって、上下に鶏舎が佇んでいる。2mもあるフクロウが鶏小屋の中を飛びぬけていったと、黒富士開設時のエピソードを伺ったことがある。夏の緑にうずもれていく生き物たちの空間が、清らかな水と共にあるイメージ。

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